「企業情報とくしま」に那賀ウッドの取組を掲載いただきました

とくしま産業振興機構さんが発行する広報誌「企業情報とくしま」に『地域材の活用で地域振興と環境保全を!』と題して那賀ウッドの取組を掲載頂きました。

表紙から3ページに渡り特集頂いております。PDFは下記よりご覧ください!

企業情報とくしま 2023年6月 那賀ウッド記事

 

以下、記事抜粋

木粉(Wood Powder)で木材の新しい利用方法で再生へ

2014年に株式会社エイト日本技術開発、那賀町、木頭森林組合などの共同出資によって設立された株式会社那賀ウッド。地域材を新技術により丁寧に加工した自然素材の「木粉(MOKUFUN)」や、木粉を使った環境に優しい商品が話題だ。

魅力ある持続可能な四国づくりにつながる優れた取組が認められ「木や森林を活用した林業6次産業化事業」が2023年の「第2回ローカルSDGs四国表彰」の「地域課題解決部門優秀賞」を受賞。森林の町の価値を高める那賀ウッドの事業について伺った。

森林が抱える課題を地域で利用することで解決

地元の生産・加工・販売事業者と連携し「木質資源の活用・林業を通じた地域振興と国土保全」を事業全体のミッションにしている。事業は大きく分けて4つ。1.「木粉 -Wood Powder- 事業」、2. 地域の伝統技術・革新技術により木粉や無垢材を活用した多様な木製品を製作する「木製品事業」、3. 木育活動・森林教育活動を通じて地域の活力の源である「人材育成」を行う「教育事業」、4. 地域材の活用を目指し、高機能・高付加価値の製品開発・研究を行う「木材用途開発・研究事業」を行っている。

豊かな森林資源を活用へ 那賀ウッドの誕生

庄野氏は、エイト日本技術開発の事業推進本部で新規事業を担当し、那賀ウッドの設立時から事業に携わり那賀ウッドの副社長も兼任している。幼い頃から祖父や祖母のタケノコ農園の出荷を手伝うなど、竹や木、森林は身近な存在だった。現在も阿南市でタケノコ農園も営んでいる。「竹は森林資源ではないと思う方もいらっしゃるかもしれませんが、竹も多く生えています。竹林も森林扱いです。森林の定義は、⾼さ5 m以上の木や竹が生え、被覆率が30%以上あり、0.3ha より広いと森林です」と話す。豊富な森林資源を活用したいという思いで事業を進め、木だけでなく、竹林整備もカバーしている。

木育・森林活動といった教育の場で子どもたちに最初に伝えているのは、世界や日本と比較しての那賀町の森林率や山の手入れの大切さだ。世界の森林率は31%。日本の森林率は67%(人工林40%)、四国の森林率は74%(人工林率61%)と、四国は森林率が高いが、その中でも那賀町の森林率は95%(人工林率78%)と群を抜いて高い「森林の町」である。

木は、家屋や建築用資材、家具などの材料として幅広い用途で使用されてきた。材料だけでなく、料理や風呂を炊くときの薪、竹は、タケノコなどの食料、遊びの場や生活用具など、木や竹も生活の一部として多くの人々に使われてきた。現在では外国産材の流入、新築住宅戸数の減少などを理由に、国産材の活用が減少し、木や竹を材料としてきた生活用品もプラスチックに置き換わってきている。タケノコも徳島県はナンバーワンの生産地であったが、加工品など中国産が台頭している。

木や竹を使用しないのであれば、自然のまま山に放置しておけばいいのかというと、そうではない。全国でも手入れが滞った森林や山地は社会問題となっている。放置したままでは、森林が荒れ放題になってしまう。近年では線状降水帯など、予測が難しい異常気象による自然災害も多く発生している。荒れた山のままでは木が倒れやすくなる。山が崩れて水が溢れれば、川から大量の水が流れて洪水被害が発生する。
山と川と海、人とのくらしはつながっていて、山が荒れることは、山間部だけでなく、市街地などすべての人々にとっても問題であるということを伝えている。

全国有数の森林の町である那賀町も森林・山地の課題を多く抱え、森林資源を有効活用するために、木材の成分である高強度、高耐熱性の「リグニン」を新素材として使った研究開発を大学などと一緒に行っていた。「リグニン」を素材にするためには、木から直接成分を抽出できないので、細かいパウダー状(木粉化)にする必要があった。木材のパウダー化を実現させ、課題解決をしようと、エイト日本技術開発に調査業務を委託。森林事業を通じて災害の防止だけでなく、商品の開発により地域活性などを推進していこうという方針が決まった。

そこでエイト日本技術開発が50% 出資、那賀町が20%、木頭森林組合などが30% 負担で共同出資をし、2014 年に「那賀ウッド」が設立された。木粉だけで事業が成り立つのかどうかを検討し事業計画を作成。2015 年には徳島県の「あったかビジネス事業計画」の認定も受けた。ミッションとして掲げているのは「木質資源の活用・林業を通じた地域振興と国土保全課題」。

木を使いながら環境も守り、持続可能な地域循環に向けて、農山漁村と人口集中する都市を補完し合うような関係性で共存していけることを目指している。

ここにしかできない木粉(MOKUFUN)

木粉は粒子が細かく、英語の「ウッドパウダー(Wood Powder)」と言った方がイメージしやすいかもしれない。「おが粉」と「木粉」がよく混同されるが、木粉は「おが粉」よりもさらに小さく、粒子の形状が安定している。おが粉やチップ状の粒子が大きく、品質の安定した「木粉」も製造対応可能だ。当社における木片粒子の大きさによる名称区分としては、チップは5mm以上、おが粉は1mm~5mmで、木粉は1mm(1,000 μm以下)となっている。
今までの「木粉」は、建築資材の製材過程や取り壊し木材のリサイクル過程で副産物として生成されていたため、不純物の除去や粒度調整が困難で、素材としての要求規格の高度化に対応しにくくなっていた、そこに那賀ウッドは「品質」を加える木粉2.0化を進めている。

製材所・木工所において、板や柱の長さ調節のために切り落とされた端材は、以前は処分されていたが、当社で粉砕加工することにより品質の高いバージン材の木粉として有効利用ができるようになった。粉にすることによって、吸水性、消臭性、断熱性、抗菌性、生分解性といった木の機能性がより顕著に出て機能性を発現する事も分かった。

例えば、吸水性。木には吸水性があり水分を吸うが、板に水をかけても、拭き取ると多少の水分は含むが拭き取れる。これがパウダー状になった木粉に水をかけると、表面積が大きくなった木粉は瞬間的にすべてを吸水し、湿気も吸い込む。消臭性に関しても高い効果を得た。竹も粉状のパウダー状にすれば、匂いをより多く抑えて消臭性が高くなった。

那賀ウッドの木粉は国産材100% の純国産製品で、原料は生産地が明確な製材端材や背板を使用している。解体材不使用で、粘着剤、防腐剤、アスベスト、鉄くずなど不純物混入も無い。さらに他の素材と混ぜ合わせることもでき、成分の抽出、吸着、基材との活用方法も多種多様で、想像を超える活用方法がある。ベンチ、階段、遊具、防護柵、ウッドデッキ、ねんど、塗り壁、うちわ、扇子、発酵浴、線香など幅広いニーズに応えてきた。スギだけでなく、ヒノキ、竹粉、バーク(樹皮)粉など多くの地域材に対応している。

もし他社で同じ機械を使っても同じ「木粉」はできないという自負と、機械を扱う人の技術がある。機械に材料を投入し、破砕機で一次粉砕、二次粉砕と一連の流れで細かくし、ふるい分けていく。大きさが違う粗い「木粉」が中に入ったら粗いものを弾いていく。反対に粗いものが欲しければ細かい「木粉」をのける。顧客の要望に合うような粒度のものを作るために、機械の設定をどうするかも技術だという。材料の違いや、気候の変化もある。春夏秋冬だけでなく、同じ月でも雨か晴れで湿度も違う。

日々違う条件の中でも、最終のパウダー状になった時には、常に同じ品質を保てるのも強みだ。機械をどう扱えば、リクエスト通りの粒度や色目になるかという試行錯誤を重ね、地道にやってきた経験とノウハウがある。材料を揃えることについては周りの製材所や木工所、林業事業体ともタッグを組み協力体制ができている。

全国からの「地元の材を使ってSDGs に貢献したい」という商品作りにも応えてきた。千葉県の特産品である梨を生産する際に発生する梨選定枝を活用したいという要望に応え、粉砕加工し木粉からボールペンを作ったこともある。他社には作れない「木粉」は、北海道から九州まで全国各地から多種多様な要望があるが、用途に応じた試作テストをしっかりと行い、高い品質のものを届けている。

話題沸騰!竹が「バイオヴィーガンレザー」の材料に

動物由来ではないアニマルフリーのレザー調素材である「ヴィーガンレザー」。
合成のレザーには樹脂や石油由来の材料が使われているものもあり、自然素材に置き換えていこうという流れがある。石油由来原料を抑え、植物由来の原料を配合することにより環境に配慮した新しいヴィーガンレザーが「バイオヴィーガンレザー」だ。
この素材に竹が使用されている。阿南市の竹を那賀ウッドで粉砕して竹粉化し、鳴門市にある共和ライフテクノでレザー加工を施した「「BambLena(バンブレナ)」が誕生している。従来の革製品と同様におしゃれなバッグや小物になる。地元徳島県産の竹であることから生地の調達に要する二酸化炭素排出も抑えられる。まさにサステナブルな製品だ。

無垢の木製品「Wood Board KUKU」

今までにない無垢の木製品をと、最初に取り組んだのが地元の「木頭杉」を使った大きなSUP ボードだった。木が立ち伸びるさまを「クク」と言い、木の神様の名前の由来にもなっているところから「KUKU(クク)」を名前に取り入れている。

サーフボードや、レジャーやキャンプで使えるアウトドア製品、インテリア・食器・スマホ
スタンドなど、デザイン性があるお洒落な製品を世に出している。「木頭杉」を用いて品質が高く、喜んでもらえるような製品をつくり、製品を通じて「山と川と海のつながり」や「地元の環境の美しさ・素晴らしさ」を伝えていきたいという思いが込められている。

森林の中でのアクティビティや教育事業でも使用し、活動を通じて人とのつながりや連携もできているという。COOL JAPAN AWARD(クールジャパンアワード)2019 アウトバウンド部門を受賞し、海外からも高い評価を得ている。

これからに向けて

これからも地域が持続可能に続けていけることを念頭に『価値ある環境を未来に』を合言葉に事業を進めていく。イチオシ商品は、パナソニックプロダクションエンジニアリングとの共同で製品開発を行い誕生した植物由来の優しい食器「BOTANICAL」。

木頭杉と、阿南市の竹の間伐材を粉砕加工し、品質の高いパウダーと樹脂を混合している。高い安全性が求められ、ハードルの高い給食食器の加工にも使用が予定されている。今後も、地域のものを使って愛着のあるデザインのものをつくっていく。また、徳島県だけでなく全国各地の地域の魅力を発信し、事業者の魅力を発信するようなオリジナルグッズを制作したいという要望にも積極的に取り組んでいく。

(文責:藪田ひとみ)

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